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「学習」から「実践」へ!大事な例文作り

オリジナルの例文を作ろう!

 習う単元の例文は重要です。論理的で部分的な文型(文法)説明より生きた例文の方が学習者の心に伝わります。また文型説明というのは学習者の母語で書かれた教材やインターネットを検索すればすぐに出てきます。学習者が自分で予習もできるということです。では実際の授業では何が大切なのでしょうか?それは、教師が学習者の生活に寄り添って日本語を教えることです。私達教師しかできないことは学習者一人一人に合った例文作りです。それは教科書に書いてある一般的な例文ではなく、個人的なオーダーメイドの例文です。その学習者にだけ伝わるような例文です。そうすれば生きた日本語を確実に覚えて使うことができます。これこそ教師の創意工夫の1つです。

日記を書いてもらうこと➡教師のトレーニングにもなる

 もう一つ日本語が上達するための有効な手段は学習者に日記を書いてもらうことです。そうすれば彼らの実生活に関係する生きた日本語を使うことができます。これは文型導入後、練習を一通り終えたら宿題としてオススメできます。その際、他の単語や言い回しも日記に登場するので、それもていねいに教えることが大切です。これは教師のトレーニングにもなります。あらかじめ決められた単元や単語しか教えない、又はシラバスに沿うことに重点を置きすぎると言語の自由さを教えることが難しくなってきます。教師の柔軟性は学習者の日記の添削でも鍛えることができるのです。

学習者が私を変えた!

 まだ教師駆け出しの頃、レッスンで学習者と教科書を使って「意向形(volitional form)+とする」 (例:お風呂に入ろうとする、友達に話そうとする、等) の練習をしていました。そのとき学習者がおもむろにコーヒーカップを手に取り、口に運びました。そこで私はすかさず「ストップ!」と大きな声を出しました。私は「それが『飲もうとする』だよ!」と伝えました。すると彼は「そうか!これですね!」と驚き、満面の笑みを浮かべました。淡々と続いた教科書の練習より、学習者の行動に合わせて提示した例文が最強に生きた例文だったのです。

感覚で日本語を理解する

 このレッスン以降、私は以下のことに気づきました。

学習者は感覚で日本語を理解することが大事。

それは教科書にある一般的な例文だけではなく、
 学習者にとっての個人的な例文が必要ということ。

例文作りは教師の創意工夫の訓練になる。

 
 そこで私はできるだけ学習者の行動や日常生活、仕事や趣味に合わせた例文をつくることを心がけてきました。例えばIT関係の仕事に就いている人にはAIやテクノロジーに関する語句(カタカナでいけますね)を例文に取り入れたり、お子さんがいる人には学校行事に関する内容の例文を作ったりなど、彼らの身近にある物事を使った例文は明日にも話せる実践的な日本語です。
 また「学習」という概念をなるべくなくすためにも彼らに最近の出来事について夢中になって話してもらうというレッスンも行っています。そのとき教師はただ聞いているのではなく、習った日本語を取り入れてもらうように促すことが大切です。これは先ほどの日記と同じで教師の柔軟性を養う訓練にもなります。教科書での基礎学習は必要ですが学習者は(教師も!)機械的にそれをこなすという状況に陥ることがあります。そうではなく何のために日本語を習っているのか?という目的を意識して生きた日本語を使えるようにすることが教師の役目です。

 まずは学習者の好きなことを使って簡単な例文づくりから始めてみませんか?