カテゴリー
間接法のコツ

“busy”=「忙しい」?

“busy”って日本語で何ですか?

 学習者からこのような質問が来たら、「忙しい(です)」と答えるのではないでしょうか?日本語初級レベルの基本形容詞の1つである「忙しい」という単語は日常生活において比較的頻繁に使われる忙しさを表す形容詞です。ですから、学習者にとってすぐに覚えて使いたい単語です。ところが、プライベートレッスンでは、次のような文章をよく聞くことになります。

「レストランは忙しかったです。」

教師「週末はどうでしたか?」
学習者「とても楽しかったです。」
教師「何をしましたか?」
学習者「友達とレストランでピザを食べました。」

 
 レッスンの最初のフリートークで見られる会話です。上記の会話に続き、初級レベルの学習者がよく使う日本語があります。

学習者「レストランは忙しかったです。」


 さて、この文章を聞いて、皆さんは???と思いませんか?これは英語を話す日本語学習者であれば特に多い事例です。彼らが言いたい本当の意味は、

「レストランはこんでいました。」
“The restaurant was busy.”


です。実は、日本語の「こんでいる」は英語で”busy”なのです。ここで”busy”について以下のようにまとめてみます。

“busy”=「忙しい(です)」or「こんでいます」

 
 初級レベルの教科書に登場する「忙しい」という単語を覚えた学習者はすぐに日々の忙しさを表現することができますが、それと同時に「こんでいる」という日本語も「忙しい」と言ってしまう傾向があります。それは英語に起因しているからです。

 プライベートレッスンの生徒の多くは日本で仕事をしている人やその家族の方です。そして仕事や家庭で使う言語が英語をはじめとする日本語以外の言語であることが多いです。彼らは忙しい日々の中で週に1回、1時間の日本語レッスンを受けながら日本語レベルの向上を目指しています。このような環境だとどうしても英語(又は生徒の母語)を媒介語として日本語を学習する間接法が基本になります。

他の英単語を用意する

 フリートークなどで学習者が週末の出来事について話すとき、「レストランは忙しかったです。」と言ったら、(プライベートレッスンでは本当によくあります。)正確な日本語をきちんと紹介しましょう。

「レストランはこんでいました。」

 
 さて、この時、学習者の頭の中にはまだ”busy”があります。ですが「忙しい」も「こんでいます」も”busy”だと混乱しそうなので、教師は他の英語を用意します。

“The restaurant was crowded.”


“busy”ではなく“crowded”を提示します。こうして別の英単語を用意することも間接法の大切な要素です。
まとめると以下の通りです。

(1)”I am busy.” = 「私は忙しいです。」

(2)”The restaurant is crowded.” = 「(その)レストランはこんでいます。」

 
 間接法で教えるなら日常生活でよく使われる英単語を意識しておきましょう。英単語”busy”は「忙しい」と「こんでいます」の2つの意味を持ち、日常生活でどちらも本当によく登場します。ですので教師は学習者の言いたいことをしっかりキャッチする英語力が必要になります。PJLでは間接法を主体として日本語を教えているので日本語文法について英語で説明できるのはもちろんのこと、日常英会話の理解を大切にしています。(ただし、レッスン中の教師の発言はできる限り日本語であることが前提になります。全てを英語で話しているわけではありませんよ!)このブログを読んでくださった方で間接法にご興味があれば、ぜひ日本語学習者の良き理解者となれるよう日常英会話にも意識を向けてみてくださいね!