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考え方

専門用語って…

そのまま伝える?

 レッスン中、教科書や文法書に書いてある説明をそのまま学習者に伝えていませんか?
日本語教育に関する様々な書籍を読んでみて思うことは「専門用語」の多さです。教師用の書籍はもちろん、学習者向けの教科書にさえ言語学習のための専門用語がちりばめられています。(英語で書かれている文法書や教科書も同じです。)
日本語を学ぶために基本的な専門用語は覚えた方が役に立ちます。しかし、全ての学習者にメリットがあるわけではありません。

専門用語を当たり前にしないで!

 教師が思っている以上に、扱う専門用語は意識した方がいいでしょう。例えば下記の専門用語は言語学習に欠かせません。

主語+目的語+動詞
Subject + Object + Verb


上記は日本語の動詞文の語順を習うときに使われます。動詞と目的語を入れ替えれば英語の動詞文の語順になりますね。日本の英語教育でも登場します。

 少なくとも日本の中学校で見るこれらの専門用語は日本人なら知っている、覚えていることでしょう。ですが、覚えているからと言って英語がスラスラ話せるようになった…というわけでもありません。教師が当たり前のように扱う専門用語は、一人一人の学習者の理解度によって難しくもなります。授業中、慣れていない専門用語の登場で、実際に覚えなければいけない文型や単語に集中できなくなるかもしれません。

言い換えることが教師の仕事

 多くの学習者に理解してもらえるような説明をするために、教師は自分が得た知識を一旦咀嚼して簡単な単語で内容をまとめておくことが重要です。常にこれを行っていると教師自身も理解が深まります。そして授業中、教科書に専門用語がずらっと並んでいたとしても、教師はすぐにシンプルな言い換えができるので学習者の理解の助けになります。これこそが教師の仕事です。

 先ほどの「主語+目的語+動詞」をわかりやすい言葉に置き換えてみました。

ひと+もの+アクション
Person+Thing+Action

 
 スーパービギナーレベルの人に「飲みます/食べます/勉強します」などの動詞文を覚えてもらうには、上記のような説明もありです。更にここに助詞が加わるわけですからなおさら簡単にしておきたいところです。導入説明は最初の一時的なものですから、学習者がすんなり理解できるレベルに合わせればいいのです。そして何よりも大事なことは「私はパンを食べます。」などの例文提示です。

 つまり教師は教科書や文法書に書いてあることを気軽に学習者に「コピペ」のように伝えるのではなく、子供にもわかるくらいのやさしい伝え方を準備しておくことが重要です。それが教師の仕事といっても過言ではないでしょう。書籍からの「コピペ」のような伝え方は理解が早い学習者や教育関係の仕事に就いている学習者には通じても、他の学習者がおきざりにされてしまいます。

 また、間接法において英語で書かれた説明をそのまま学習者に伝えるのも丁寧な教え方とは言えません。教師自身がよくわからない英単語を辞書で調べて意味を理解したところで、英語を話す学習者がその単語を知っているとは限りません。日常的に使われていない単語は誰にとっても難しいのです。

 日本語学習が楽しいと思えるような工夫というのはシンプルな単語への言い換えが一役買っています。とにかく難しいと思わせないことが教師の仕事です。何よりも自分の言葉で伝えてみると心の優しさと理解への易しさが学習者に伝わりますよ。